──昇格直後に知っておくべき現場マネジメント10の心得」
新シリーズを始めます。今回は趣向を変えて同時進行で舞台の異なる二人を主人公にしました。どんなに優れたプレイヤーであっても、優れたリーダーになるとはかぎりませんよね!それはプロのスポーツ界を見ても明らかです。
では、私たちのいるビジネスの社会においてリーダーとはどうあるべきなのでしょうか?従来同様5回シリーズ(で終わるかわかりませんが、、、)、30代のリーダーになったばかりの貴方に届くように書きました!
それではどうぞ!
第1話:「昇格、それは“孤独との出会い”──二人のリーダーの始動」
1.アパレルの現場で
──“翔太”という男
午前10時、開店前のショーウィンドウに映る自分を見て、翔太はため息をついた。
「副店長」と刺繍された名札の重さが、やけに首に食い込む気がした。
「昨日も売上、チーム全体で予算未達か……」
彼はもともと全国でも指折りの販売員だった。
どんな顧客にも自然に声をかけ、商品の魅力を伝え、確実に購入へとつなげる。
数字で言えば、“プレイヤーとしての才能”は抜群だった。
しかし──昇格してから半年。
同じようにやっているのに、何も噛み合わない。
「言った通りやってくれればいいのに」「なんで分からないんだよ」
気づけば、そんな言葉が口をついて出るようになっていた。
売り場の隅で後輩が気まずそうに視線をそらすたび、胸の奥がチクっと痛む。
けれど、素直に謝ることもできない。
「リーダーなんだからしっかりしろ」──その言葉が頭の中で響いて離れなかった。
2.観光リゾートで
──“真帆”という女性
その頃、海沿いのリゾートホテルでは、
フロアリーダーの真帆が、スタッフ全員を集めて朝のブリーフィングを始めていた。
「おはよう。昨日、チェックインの対応でお客様からお褒めの言葉をいただきました。
担当してくれた麻衣ちゃん、ありがとう。皆にも共有しておきます。」
スタッフの表情が少し緩む。
でもその中に、ほんの一瞬の“ざらつき”があったことを、真帆は見逃さなかった。
(あの子、昨日ミスをしたばかりだったから……他の子の中にモヤモヤが残ってる)
支えるつもりで声をかけても、誰かにとっては不公平に聞こえる。
「リーダーになって初めて、“平等と公平は違う”って気づくものなのよ」
そう言ったのは、かつて彼女を育ててくれた先輩リーダーだった。
真帆は、笑顔を作りながら心の中で小さくつぶやいた。
「“支える”って、難しいな……」
3.二人の共通点
翔太は焦っていた。
「チームが動かないのは、俺の言い方が悪いのか?
それとも、もう俺には向いてないのか?」
真帆は悩んでいた。
「私は“やさしさ”で引っ張ってるつもり。でも、このままだと甘く見られるのかもしれない」
二人の職場は違う。
でも、二人とも同じ壁にぶつかっていた。
“プレイヤー”だった自分と、“リーダー”としての自分が、
まだひとつになれていない。
4.プレイヤー脳からの脱却
心理学的に言えば、昇格直後に最も苦しむのは、
「成果の基準」が変わる瞬間だ。
- プレイヤーは“自分の結果”で評価される
- リーダーは“他人の結果”で評価される
しかし脳は、過去の成功体験(=自分で動いて成果を出す)を最適解として記憶している。
だから、無意識に「自分でやった方が早い」に戻ってしまう。
米Gallup社の調査では、昇格したリーダーのうち、
46%が最初の1年で「成果を出せない」と感じているという。
理由のトップは「自分の成功パターンが通用しない」からだ。
5.“支えるリーダー”は何を支えているのか?
真帆は、自分が支えられてきた経験を思い出す。
あの頃、自分がミスして泣いていたとき、先輩はこう言ってくれた。
「真帆が悩んでるってことは、ちゃんと人の気持ちを考えてるってことよ。
それは、立派なリーダーの素質よ。」
支えるというのは、仕事のフォローではなく、心の余白を作ることなのだと、
最近ようやく気づいた。
6.翔太の“孤独”が変わり始める
その夜、翔太は閉店後のバックヤードで、チームのミーティングを開いた。
話題は売上報告……のはずが、なぜか沈黙が続く。
彼は深呼吸して、思い切って言った。
「最近、みんなの気持ちが分からない。俺、空回りしてるかもしれない。」
驚いた顔をした後輩の一人が、
「…翔太さん、そういうの言ってくれるの、ちょっとホッとします」と笑った。
小さな変化だった。
でもその瞬間、翔太の“プレイヤー脳”がほんの少しだけ“リーダー脳”に切り替わった。
🔍 次回予告
第2話:「指示と支援の狭間で──“任せる勇気”の難しさ」
翔太は「任せる」ことの怖さを学び、
真帆は「任せすぎる」ことでチームのバランスを崩す。
それぞれの失敗が、“信頼の本質”を浮かび上がらせていく。
💡 ミニワーク:「リーダーの自己分析チェック」
- 最近、自分でやった方が早いと感じた仕事が3つ以上ある
- メンバーに“任せたけど不安”だった案件がある
- 成果を出す=自分が動くことだと思っている
- メンバーとの雑談時間より報告指導の時間の方が長い
- 「ありがとう」より「まだまだだな」が口癖になっている
→ 3つ以上チェックがついた方へ
あなたはまだ“プレイヤー脳”で動いているサイン。
次回、「任せる勇気」編で、チームを信じる第一歩を見つけましょう。

