第1章:コミュニケーションが止まった瞬間から、組織は崩壊に向かう
組織は“血流”であるコミュニケーションによって、活性化と修復を繰り返しながら健全性を保っています。しかしその対話が停滞したとき、表面上は穏やかでも、内側では「気づかれない腐敗」が静かに進行します。
社員が声を上げなくなった時、問題は「存在しない」のではなく「存在していても、無視されている」状態になっていきます。
第2章:「あの企業」も、最初は“沈黙”から始まった
たとえば、2010年代に起きた某大手アパレル企業の長時間労働問題。内部では「いつか誰かが言ってくれるだろう」と無言が蔓延し、管理職も見て見ぬふりを続けた結果、若手社員の自殺がきっかけで一気に社会問題化しました。
声なき“放置”は、時に“隠蔽”と変わらぬインパクトを持ちます。
第3章:内部告発は「最後のコミュニケーション」
告発が行われるのは、コミュニケーションが完全に断絶されたあとです。
本来、働く人の違和感や不満、提案は、日常的な会話や相談で吸い上げるべきもの。ところが「話しても無駄」「どうせ変わらない」と感じさせてしまう環境では、社員は“外部”に訴えるしかなくなります。
これは、「組織内の浄化メカニズム」が壊れた証です。
第4章:被雇用者の責任ではなく、仕組みの問題
「最近の若者は意見を言わない」と嘆く声もありますが、そもそも“聞いてもらえる安心感”がなければ、誰も声を上げられません。
怖いのは、雇用側が「沈黙=満足」と誤解しやすい点です。
意見を持っていても、安心して出せる土壌がなければ、それは「表現されない真実」として組織の奥底に沈殿していきます。
第5章:「対話する組織」は、強くしなやかになる
健全な組織は、“課題が出ること”を恐れません。むしろ「課題が見える」ことを前向きに捉え、「声が上がる組織」を価値あるものとして育てています。
これは、心理的安全性の話にとどまりません。
自浄能力を持った組織は、変化にも強く、離職率も低く、問題が大きくなる前に手が打てる体質を持つのです。
【まとめ】
「話し合わない組織」は、壊れた浄化装置である。
“聞く耳”のある上司、“言える場”のある環境――
たったそれだけで、組織の未来は変わります。
