「責任」と「権限」は立場によって異なる
会社という組織には、さまざまな立場の人がいます。経営者、部長、課長、チームリーダー、一般社員、新人──。
当然、全員が同じ責任と権限を持っているわけではありません。
しかし現場では、こうした「責任と権限の適正なバランス」がうまく設計されていないケースが多く見られます。
「リーダーと言われてはいるけど、何を決めていいか分からない」
「中間管理職なのに、経営判断を押し付けられている気がする」
「そもそも私に権限があるのかどうかもわからない」
このような“もやもや”は、組織全体の動きを鈍らせ、責任感のある人を疲弊させてしまう原因になります。
責任と権限の“ズレ”は、どこで生まれるのか?
以下の3つのズレが、現場の混乱を引き起こします。
① 経営者からの「暗黙の期待」
経営者や上位管理者が、言葉にせずに「これくらい分かっているはず」と期待してしまうことで、
新任管理職やリーダーは「言われてないけど、やらなきゃいけない…?」と不安になります。
② 職位に対する“解像度の低さ”
・部長=意思決定者?
・課長=現場統括?
・リーダー=調整役?
──こうした役割が会社ごとに違い、「課長って何する人?」が曖昧なまま登用されると、現場は混乱します。
③ 組織の「名ばかり昇進」問題
ポストだけ与えられ、権限やサポート体制が不十分なケース。
これは、責任と権限のギャップが最も顕著に現れる状態です。
ケース別:立場ごとの責任と権限の“適正バランス”
立場 | 責任 | 権限 | 注意点 |
---|---|---|---|
経営者 | 組織全体の方向性 | 全社戦略・資源配分 | 現場のリアルから乖離しないよう定期的に対話を |
中間管理職 | 組織目標の実行と成果 | 部門運営・人事評価 | 上からのプレッシャーと下からの期待の板挟み |
リーダー | プロジェクト遂行・チーム運営 | 一部判断・調整権限 | 権限不足のまま責任を押しつけられやすい |
一般社員 | 担当業務の完遂 | 自己裁量の範囲内 | 自律性の有無は企業文化に左右される |
「任せる」と「投げる」は違う
上司がよく言う「任せたよ」。
この一言が、時に部下を大きく不安にさせます。
「任せる」とは:
- 明確に責任と権限の範囲を伝える
- サポート体制がある
- 失敗を責めない前提がある
「投げる」とは:
- 丸投げして結果だけ求める
- 責任を部下に転嫁する
- 結果が悪ければ個人の問題にする
“任せたよ”の中に、どれだけ説明と信頼があるか?
これが、任せ方の分かれ目です。
「グラデーション」で考える責任と権限
組織の中では、責任と権限は段階的に変化していくグラデーション構造であるべきです。
たとえば:
- 新人:責任【小】/権限【小】
- リーダー:責任【中】/権限【中】
- 管理職:責任【大】/権限【大】
- 経営層:責任【全社】/権限【全社】
この“段階的に広がる設計”があれば、人は安心して成長していけます。
しかし、いきなり大きな責任だけを背負わせたり、権限を与えないままプレッシャーだけかければ、人は潰れてしまうのです。
まとめ:「責任と権限の筋肉痛」を防ぐために
任されたのに、どう動けばいいか分からない──
そんな悩みは、立場と責任・権限の“解像度の低さ”から来ています。
人は、見えないものには動けません。
次回は、さらにこの“見えにくさ”を解消するために必要な「役割の明文化」について深掘りします。
お楽しみに。