【シリーズ第2回】「責任と権限の“グラデーション”──立場ごとの適正とは?」


「責任」と「権限」は立場によって異なる

会社という組織には、さまざまな立場の人がいます。経営者、部長、課長、チームリーダー、一般社員、新人──。

当然、全員が同じ責任と権限を持っているわけではありません。
しかし現場では、こうした「責任と権限の適正なバランス」がうまく設計されていないケースが多く見られます。

「リーダーと言われてはいるけど、何を決めていいか分からない」
「中間管理職なのに、経営判断を押し付けられている気がする」
「そもそも私に権限があるのかどうかもわからない」

このような“もやもや”は、組織全体の動きを鈍らせ、責任感のある人を疲弊させてしまう原因になります。


責任と権限の“ズレ”は、どこで生まれるのか?

以下の3つのズレが、現場の混乱を引き起こします。

① 経営者からの「暗黙の期待」

経営者や上位管理者が、言葉にせずに「これくらい分かっているはず」と期待してしまうことで、
新任管理職やリーダーは「言われてないけど、やらなきゃいけない…?」と不安になります。

② 職位に対する“解像度の低さ”

・部長=意思決定者?
・課長=現場統括?
・リーダー=調整役?

──こうした役割が会社ごとに違い、「課長って何する人?」が曖昧なまま登用されると、現場は混乱します。

③ 組織の「名ばかり昇進」問題

ポストだけ与えられ、権限やサポート体制が不十分なケース。
これは、責任と権限のギャップが最も顕著に現れる状態です。


ケース別:立場ごとの責任と権限の“適正バランス”

立場責任権限注意点
経営者組織全体の方向性全社戦略・資源配分現場のリアルから乖離しないよう定期的に対話を
中間管理職組織目標の実行と成果部門運営・人事評価上からのプレッシャーと下からの期待の板挟み
リーダープロジェクト遂行・チーム運営一部判断・調整権限権限不足のまま責任を押しつけられやすい
一般社員担当業務の完遂自己裁量の範囲内自律性の有無は企業文化に左右される

「任せる」と「投げる」は違う

上司がよく言う「任せたよ」。
この一言が、時に部下を大きく不安にさせます。

「任せる」とは:

  • 明確に責任と権限の範囲を伝える
  • サポート体制がある
  • 失敗を責めない前提がある

「投げる」とは:

  • 丸投げして結果だけ求める
  • 責任を部下に転嫁する
  • 結果が悪ければ個人の問題にする

“任せたよ”の中に、どれだけ説明と信頼があるか?
これが、任せ方の分かれ目です。


「グラデーション」で考える責任と権限

組織の中では、責任と権限は段階的に変化していくグラデーション構造であるべきです。

たとえば:

  • 新人:責任【小】/権限【小】
  • リーダー:責任【中】/権限【中】
  • 管理職:責任【大】/権限【大】
  • 経営層:責任【全社】/権限【全社】

この“段階的に広がる設計”があれば、人は安心して成長していけます。
しかし、いきなり大きな責任だけを背負わせたり、権限を与えないままプレッシャーだけかければ、人は潰れてしまうのです。


まとめ:「責任と権限の筋肉痛」を防ぐために

任されたのに、どう動けばいいか分からない──
そんな悩みは、立場と責任・権限の“解像度の低さ”から来ています。

人は、見えないものには動けません。

次回は、さらにこの“見えにくさ”を解消するために必要な「役割の明文化」について深掘りします。

お楽しみに。

投稿者について

hideyuki_kubota

1967年生まれのひつじ年の獅子座。O型