【シリーズ第3回】“明文化”されない職位の危うさ──ジョブディスクリプションなき日本型組織

◆ なぜか誰も“自分の役割”を知らない組織

「え、これって私がやるんですか?」
「それって〇〇さんの担当じゃなかったっけ?」
「言ってくれればやったのに…」

職場でこんな言葉が飛び交う場面、思い当たる方も多いのではないでしょうか。

日本型組織に多い特徴の一つに、**「役割が明文化されていない」という構造的な問題があります。
職位はある。上下関係もある。けれど──
「何をどこまで、誰が、どうやるのか?」**は実にあいまい。

それが“責任のなすりつけ合い”や“指示待ち文化”を生み、組織の不協和音へとつながっていくのです。


◆ 役割不明がもたらす“責任のなすりつけ合い”

日本の多くの職場では、「阿吽の呼吸」や「空気を読むこと」が美徳とされ、役割の明文化が敬遠されることもあります。

しかしその文化は、以下のような負の連鎖を生みがちです。

  • 「誰がどこまでやるか」が不明 → 放置や重複が発生
  • トラブルが起こる → 「聞いてない」「誰の責任?」と混乱
  • 結果的に → 声が大きい人 or 上司が責任を押しつけがち

つまり、役割の曖昧さは“責任のたらい回し”の温床になります。


◆ 曖昧な指示系統は、迷走のもと

もう一つの大きな問題は、「誰が最終判断者なのか」が不明確なまま仕事が進んでしまうことです。

とくに中間管理職層では:

  • 複数の上司から指示が飛ぶ
  • 担当がまたがる領域でリーダーが不在
  • 「前例があるから」と進めたら、あとで否定される

こうなると、現場の判断スピードは下がり、部下は動けなくなり、「考えるより様子を見る」社員が増えていきます


◆ 解決のカギは「ジョブディスクリプション」

欧米企業に多く見られる 「ジョブディスクリプション(職務記述書)」
これは、各職位に求められる責任範囲・権限・判断領域・成果目標などをあらかじめ言語化した設計図です。

これがあることで:

  • 役割と責任が明確になる
  • 不要な干渉や指示が減る
  • 自律的に判断しやすくなる
  • 組織の“公平性”も担保できる

つまり、「やるべきこと」「やらなくていいこと」の線引きがクリアになり、ストレスが激減するのです。


◆ ジョブディスクリプション設計の具体例

以下は、部門マネージャー職の簡易版ジョブディスクリプション例です。

項目内容例(マネージャー)
職位名営業部 マネージャー
ミッション営業目標の達成とチームのパフォーマンス最大化
主な業務内容営業戦略の立案、メンバーの同行指導、売上進捗の管理
権限採用一次面接、予算内経費決裁、目標設定権限
成果目標月次売上120%達成、メンバー平均達成率95%以上維持
評価項目達成率、メンバー育成、チーム離職率、会議参加率など
期待される行動特性フィードバック力、決断力、対人調整力

ポイントは、「曖昧にしないこと」と「実行可能なレベルで記述すること」。
大事なのは、“守れる内容”に落とし込むことです。


◆ 最初から完璧な設計を目指さない

「ジョブディスクリプションなんて、うちの会社には合わないよ…」
──そう感じる方もいるかもしれません。

しかし、ここで大事なのは**“完璧な制度を作ること”ではなく、“対話のきっかけにすること”**です。

  • 「このポジションには、どんな期待がある?」
  • 「どこまで任せたい? どこで相談してほしい?」
  • 「成果って、何で測る?」

こうした問いを一緒に考えることで、責任と権限のバランスも自然と整っていくのです。


◆ まとめ:「言語化」は、組織を救う

役割が曖昧なままでは、人は責任を引き受けきれません。
逆に、言葉で定義されることで、人は「自分の仕事」に誇りと意味を見出すことができます。

次回は、「責任と権限の委譲」で組織をどう自走化させていくか?──について掘り下げます。

お楽しみに!

※弊社では、「ジョブディスクリプション設計」についてのコンサルティング及びサポートも行っております。「相談だけでも・・・」とか「もう少し聞いてみたい」など御座いましたらお気軽に下記からご連絡くださいませ!

mailto:hideyuki_kubota@twill-weave.com

投稿者について

hideyuki_kubota

1967年生まれのひつじ年の獅子座。O型