前回のブログでは、「AIに任せられる育成領域」と「人が担うべき育成領域」の違いについて整理しました。では、いざ育成プログラムを設計するとき、どうやってこの2つを“いいとこ取り”していくべきなのでしょうか?
今回は、ハイブリッド型育成プログラム設計の基本ステップを、実例を交えてご紹介します。
◆ ステップ1:育成の“目的”を明確にする
まず最初に取り組むべきは、**「この育成で何を実現したいか」**の明文化です。
たとえば:
- 新入社員の「自走力」を育てたいのか?
- 中堅社員に「マネジメント思考」を身につけてほしいのか?
- 組織全体の「心理的安全性」を高めたいのか?
目的が曖昧なままでは、AIを導入しても“便利なだけ”で終わってしまいます。
◆ ステップ2:育成対象者の“傾向と個性”を分析する(AI活用ポイント)
目的が決まったら、次は対象者の理解。ここでAIの出番です。
AIによる診断ツールやエンゲージメントサーベイを活用すれば、以下のような傾向が可視化されます:
- コミュニケーションタイプ(内向/外向など)
- 自己効力感・エンゲージメントの度合い
- モチベーション因子(達成欲求、貢献欲求など)
これにより、「どんな育成アプローチが合うか」「どのグループに重点を置くべきか」など、精度の高い設計が可能になります。
◆ ステップ3:研修の構成を“二層”で設計する
ハイブリッド型設計のコツは、”AIによる“基礎学習層”と、”人による深掘り・対話層”を分けて考えることです。
【AI主導ゾーン(例)】
- 知識・理論学習のeラーニング
- 性格診断+自動フィードバック
- ワーク前の事前課題(動画視聴など)
【人主導ゾーン(例)】
- リアルorオンラインでの対話型ワークショップ
- OJTやピアレビュー
- キャリアビジョン面談(コーチング含む)
これにより、「時間の効率化」×「感情の深掘り」という両方の良さが引き出されます。
◆ ステップ4:学習後の“フォローアップ”をデザインする
忘れてはならないのが、「育成の定着」です。
AIによる進捗トラッキングやリマインダーは、個人ごとの学びの進行を後押ししてくれます。一方で、1on1やフィードバックの場面では、“どう変わったか”を人が見てあげることが必要です。
たとえば:
- AIが「〇〇さんは傾聴力が伸びています」と診断
- → 上司がその点を具体的な場面でフィードバックする
このように、AIによる可視化と人の承認が組み合わさると、学習は“実感ある成長”へと変わります。
◆ ステップ5:内省とチーム共有の仕組みを入れる
ハイブリッド型育成の成功ポイントは、「個人の学びが組織の変化につながるか」です。
そのためには、以下のような場づくりが有効です:
- 学びの内省を言語化して共有するミーティング
- チームごとのマインドフルリフレクション
- フィードバック文化の醸成(短い1on1など)
AIは分析やリマインドが得意ですが、“感情を込めて語る”ことは人にしかできません。

🔜 次回予告
次回は、**「AI研修コンテンツ活用の成功と失敗」をテーマに、実際の企業導入事例とともに、ハイブリッド化の落とし穴や、気をつけたいポイントをお伝えします。
「便利すぎて、学びが浅くなった…」そんな失敗、していませんか?