AIが人材育成の現場に急速に浸透する中、「研修プログラムをAI化してみたけれど、いまいち効果が感じられない…」そんな声も少なくありません。一方で、「AIをうまく使うことで、研修の質も成果も大きく向上した」という事例も増えています。
この違いはどこにあるのでしょうか?
成功事例:AIの強みを“的確に使い切る”組織
ある外資系企業では、新入社員研修の一部にAIチャットボットを導入しました。知識確認やFAQ対応、さらにはケーススタディのフィードバックまでをAIが担い、指導者はフィードバックの質に集中できる体制を整備。
この導入のポイントは、「AIができる範囲」と「人がやるべき領域」を明確に切り分けたこと。結果として、教える側の負担が減り、育成対象者の質問も増え、相互の理解が深まったのです。
失敗事例:AIに“任せすぎた”現場
一方、別の企業では「コスト削減」と「自動化」を目的に、研修の大半をAIプラットフォームに置き換えました。しかし、参加者の反応は芳しくなく、「質問する相手がいない」「画一的な答えしか返ってこない」といった不満が続出。
AIが答えられない“文脈”や“行間”を読み取るコミュニケーションは、やはり人の役割。そこを見誤ると、せっかくの研修が“やらされ感”満載の消化試合になってしまいます。
成否を分ける“視点”の違い
AI活用の成否を分ける視点は、「AIはあくまで手段」という認識に尽きます。
育成の本質は「人が人を理解すること」——AIはその補助役です。

言い換えれば、AIを“講師”にするのではなく、“チューター”や“ナビゲーター”の位置づけで設計することが、成功への鍵。受講者の反応や感情、成長の兆しを読み取る“目”は、今もこれからも人間の特権です。
まとめ:AI活用は「任せる」ではなく「活かす」こと
成功と失敗の差は、AIに「何を」させ、「何を」人が担うのかを見極められるかどうかにあります。手段が目的化してしまうと、結果は必ずブレます。
“AIは魔法の杖ではなく、正しく振るべき道具”
この視点を持てるかが、これからの人材育成の分かれ道です。

📌次回予告
第4回:「人が育てるべき“非認知スキル”とは何か?」
知識やスキルだけじゃない。AIがまだ手を出せない、人の“感性”を育む力とは?