第3回:AI研修コンテンツ活用の成功と失敗 〜便利さの裏にある落とし穴〜

AIが人材育成の現場に急速に浸透する中、「研修プログラムをAI化してみたけれど、いまいち効果が感じられない…」そんな声も少なくありません。一方で、「AIをうまく使うことで、研修の質も成果も大きく向上した」という事例も増えています。

この違いはどこにあるのでしょうか?


成功事例:AIの強みを“的確に使い切る”組織

ある外資系企業では、新入社員研修の一部にAIチャットボットを導入しました。知識確認やFAQ対応、さらにはケーススタディのフィードバックまでをAIが担い、指導者はフィードバックの質に集中できる体制を整備。

この導入のポイントは、「AIができる範囲」と「人がやるべき領域」を明確に切り分けたこと。結果として、教える側の負担が減り、育成対象者の質問も増え、相互の理解が深まったのです。


失敗事例:AIに“任せすぎた”現場

一方、別の企業では「コスト削減」と「自動化」を目的に、研修の大半をAIプラットフォームに置き換えました。しかし、参加者の反応は芳しくなく、「質問する相手がいない」「画一的な答えしか返ってこない」といった不満が続出。

AIが答えられない“文脈”や“行間”を読み取るコミュニケーションは、やはり人の役割。そこを見誤ると、せっかくの研修が“やらされ感”満載の消化試合になってしまいます。


成否を分ける“視点”の違い

AI活用の成否を分ける視点は、「AIはあくまで手段」という認識に尽きます。
育成の本質は「人が人を理解すること」——AIはその補助役です。

言い換えれば、AIを“講師”にするのではなく、“チューター”や“ナビゲーター”の位置づけで設計することが、成功への鍵。受講者の反応や感情、成長の兆しを読み取る“”は、今もこれからも人間の特権です。


まとめ:AI活用は「任せる」ではなく「活かす」こと

成功と失敗の差は、AIに「何を」させ、「何を」人が担うのかを見極められるかどうかにあります。手段が目的化してしまうと、結果は必ずブレます。

“AIは魔法の杖ではなく、正しく振るべき道具”
この視点を持てるかが、これからの人材育成の分かれ道です。


📌次回予告

第4回:「人が育てるべき“非認知スキル”とは何か?」
知識やスキルだけじゃない。AIがまだ手を出せない、人の“感性”を育む力とは?


投稿者について

hideyuki_kubota

1967年生まれのひつじ年の獅子座。O型