かつての育成担当者は、「何を教えるか」「どう教えるか」に主眼を置いていました。しかし、AIが知識やスキルのインプットを担えるようになった今、育成担当者の役割は大きく変容しつつあります。ただの“教育係”ではなく、AIでは手が届かない“人を支える力”を発揮するファシリテーターとしての進化が求められています。
では、“人×AI”の時代において、育成担当者に求められる新しい役割とは何か?
1.AIと人材育成の“ハブ”になる
AIは正確な情報を迅速に提供できます。しかし、それをどう活用するか、学ぶ側の状況や心理に合っているかまでは判断できません。育成担当者は、AIが提供するコンテンツと、受講者の理解や感情との“間”を取り持つ存在になります。
例えば、ある若手社員がAIからの説明を理解できていないようであれば、その原因を見極め、適切な問いかけやサポートをする。あるいは、AIで完結しないモヤモヤや葛藤に寄り添い、人としての共感を示す。こうした“つなぎ手”の役割は、今後ますます重要になります。
2.“非認知スキル”を引き出す環境デザイナーに
第4回で触れた“非認知スキル(共感力、自己制御、レジリエンスなど)”は、AIでは育てられません。育成担当者は、そうした力が育まれる「場づくり」そのものを担う存在になります。
たとえば、社員同士が安心して意見交換できるワークショップや、体験から気づきを得るリフレクションセッションなど。そこには「正解」が存在しないからこそ、人が介在し、場の空気を読み、声をかけ、間を持たせるスキルが求められるのです。
3.“共に学ぶ”スタンスが鍵
もはや「教える人/教わる人」という一方向の関係性では、若手社員の主体性や創造性は引き出せません。育成担当者が「自分も学び続ける存在」として背中を見せることが、若手の自走を促す鍵になります。
AIで得た最新情報を一緒に検討したり、生成AIのアウトプットに「どう思う?」と問いを投げかけたり。若手と並走する姿勢そのものが、育成の“型”になっていくでしょう。
🔍今回のまとめ
“育てる”から“つなげる・引き出す”へ。
AI時代の育成担当者は、知識を教える教師ではなく、学びを起こすファシリテーター。
“人にしかできない育成”こそが、あなたの価値です。

次回はいよいよシリーズ最終回、
「“学びの体験”をどうデザインするか?〜人×AI時代の育成アーキテクチャ〜」を予定しています。お楽しみに!