上に立つ人が忘れてはいけない「影響力」の重み
「上に立つ」とは、単に役職名がつくことではありません。
組織の中で人を導き、判断を下し、時には厳しい決断をしなければならない立場に立つということです。そしてその影響力は、本人が思う以上に大きく、部下のモチベーションや組織風土を左右します。
たとえば厚生労働省の調査(2022年「職場のハラスメントに関する実態調査」)によると、職場の離職理由の上位には「上司との人間関係」や「適切な指導を受けられない」が含まれています。逆に言えば、上司の言葉ひとつで人は働く喜びを見いだすこともあれば、職場を去る決断をすることもあるのです。
やってはいけない態度①:感情任せの指導
まず最も避けるべきなのは「感情任せの叱責」です。
アメリカ心理学会(APA)が2020年に行った研究では、感情的なフィードバックは受け手のパフォーマンスを低下させることが示されています。日本でも、産業カウンセラー協会の調査において「上司の怒声を受けた経験が仕事への意欲低下につながった」と回答する割合は4割を超えています。
指導の目的は「改善と成長のサポート」であるにもかかわらず、怒りに任せた言葉は「人格否定」と受け取られやすく、ハラスメントの温床になり得ます。
やってはいけない態度②:成果主義だけでの評価
かつては「個人成績が良い人が上に立つ」ことが当然のように受け入れられていました。
しかし現代の組織では、成果をあげる力と、人を育てる力は別の能力とされています。内閣府が2021年に実施した「働き方改革に関する意識調査」では、管理職に求められるスキルとして「部下との円滑なコミュニケーション」「多様性の理解」が上位を占め、個人の営業成績はむしろ低い順位に留まりました。
つまり、今の時代に「数字が取れるから偉い」という態度を見せるのは逆効果です。部下は上司の背中を見て学びます。数字の達成は評価の一部であっても、それが全てではないのです。
やってはいけない態度③:アンコンシャスバイアスを放置する
特に注意が必要なのが、”無意識の偏見(アンコンシャスバイアス)”です。
例えば「女性だからリーダーは向かない」「若いから責任のある仕事は任せられない」といった先入観は、本人が気付かないうちに発言や態度に現れます。
国際労働機関(ILO)が2020年に発表した報告書によれば、女性管理職の割合が高い組織は従業員満足度と収益性が向上するというデータがあります。それにもかかわらず、固定観念に縛られチャンスを与えないことは、組織の可能性を自ら狭めることになります。
まとめ
上に立つ人に必要なのは「冷静さ」と「公平さ」です。
部下は上司の一言一動を敏感に感じ取ります。感情的な態度や偏った価値観は、すぐに組織の空気を濁らせます。逆に、冷静で公正な姿勢は信頼を生み、部下を自律的に動かす力につながります。
「上に立つ」ということは、単に権限を持つことではなく、影響力をどう使うかを問われる立場にある、ということなのです。
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5回でお届けする本シリーズ
次回以降は・・・・
- 第2回:部下を疲弊させる「言ってはいけない言葉」
- 第3回:人を潰すマイクロマネジメントの罠
- 第4回:ハラスメントと境界線 ― 指導と強要の違い
- 第5回:未来をつくるリーダー像とアンコンシャスバイアスの克服
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