アンガーマネジメントとクレーム対応④

クレーム“してしまう側”の深層心理――何故、人はクレームを“武器化”するのか?

🔍 ご存じですか?“クレーム発信者”の多くには「正義感」と「抑圧された不満」が同居しているんです!

クレームをつける側──“してしまう側”――には、単なる“嫌がらせ”だけでは説明できない心理的動機があります。ここでは、最新の心理学・行動学・社会学のエビデンスをもとに、代表的パターンと対応策をやわらかく解説します。


1.クレーマーのタイプ別深層心理

1-1 「正義の番人」タイプ

*心理背景:フェアネス(公正感)への強いこだわり。社会的正義を守りたいという動機。
*エビデンス:進化心理学では、人は集団規範が乱れると「制裁役」を自認しやすい(Fehr & Gächter, 2002)【参照①】。

  • 例:公共施設での小さなルール違反を必ず指摘し、改善を求める。
  • 対応:「お声がけありがとうございます。こちらのルール変更は検討いたします」とまず感謝を示し、公正感を共有する。

1-2 「不満のはけ口」タイプ

*心理背景:日常生活や職場の小さなストレスを解消するために、第三者相手に発散。
*エビデンス:フラストレーション‐攻撃仮説(Dollard et al., 1939)は、抑え込まれた不満が他者への攻撃(クレーム)に転じると説明します【参照②】。

  • 例:サービスに小さな遅延があっただけで、過剰に高圧的な要求を繰り返す。
  • 対応:まずは「お気持ちをお察しします。何が一番ストレスでしたか?」と、フラストレーションの具体的内容を引き出す。

1-3 「力の誇示」タイプ

*心理背景:相手が反論しにくい立場(店舗・コールセンター担当者など)を狙い、上下関係を意識させることで自己優越感を得る。
*エビデンス:社会的ドミナンス研究(Sidanius & Pratto, 1999)によると、人は支配的な状況で「優越感」を感じやすい傾向があります【参照③】。

  • 例:「こんなこともできないのか!」と大声を出し、相手を萎縮させる。
  • 対応:毅然としたトーンで「申し訳ありません。ただ今私どもにできる範囲で改善いたします」と、相手の“優越感”の土台を崩さずに対応。

2.クレームが“武器化”される社会的要因

2-1 オンライン匿名性の高まり

SNSや口コミサイトの普及で「顔を見られずに発信できる」環境が、攻撃的クレームを助長。

  • 【参照④】Suler, J. (2004). The Online Disinhibition Effect

2-2 サービスへの過剰期待

日本生産性本部調査(2020)で、「完璧なサービス」を期待する顧客は全体の30%。期待-現実ギャップで「期待」が高いほどクレーム頻度が上がります【参照⑤】。

2-3 経済的不安とストレス

コロナ禍以降、家計や雇用の不安が増大。小さな不満がサービス企業への攻撃に転嫁されやすくなっています(OECD, 2021)【参照⑥】。


3.“してしまう側”へのアンガーマネジメント技法

3-1 「自己気づき」のトレーニング

  • 方法:怒りやクレームを発信しそうな瞬間を記録し、「何が引き金だったか」振り返る。
  • エビデンス:自己モニタリングは行動変容理論(Prochaska & DiClemente, 1983)で有効性が示されています【参照⑦】。

3-2 「ディレイ&ディストラクション」法

  • 方法:クレーム発言をしたくなったら、まず10秒数える/深呼吸→別作業に移る。
  • エビデンス:衝動コントロール研究(Baumeister et al., 1994)で、短い“遅延”が衝動行動を抑制する効果が確認されています【参照⑧】。

3-3 「代替チャネル」の活用

  • 方法:即時発信ではなく、公式アンケートやフィードバックフォームに意見を投稿。
  • 効果:自分の意見が「改善プロセス」で扱われると感じることで、攻撃性が低減(Forbes, 2019)【参照⑨】。

4.日常で心がける“予防マインドセット”

  1. 不満の書き出し
    日の終わりに「今日不満だったこと」リストをノートに3つ書く⇒解消策を1つ考える。
  2. 感謝センサス
    小さなありがとうを1日5回声に出すことで、脳内オキシトシンが増え、攻撃性を抑制(Emotional Science, 2017)【参照⑩】。
  3. 短期目標設定+達成記録
    小さな目標を毎日立て、達成時に達成感を味わうことで、自己効力感が高まりフラストレーションの蓄積を防止(Locke & Latham, 2002)【参照⑪】。

【参照データ一覧】

① Fehr, E., & Gächter, S. (2002). Altruistic Punishment in Humans.
② Dollard, J., et al. (1939). Frustration and Aggression.
③ Sidanius, J., & Pratto, F. (1999). Social Dominance.
④ Suler, J. (2004). The Online Disinhibition Effect.
⑤ 日本生産性本部 (2020). 顧客満足度調査.
⑥ OECD. (2021). Economic Outlook during COVID-19.
⑦ Prochaska, J. O., & DiClemente, C. C. (1983). Stages of Change Model.
⑧ Baumeister, R. F., et al. (1994). Self-Regulation Failure.
⑨ Forbes (2019). Customer Feedback Channels and Complaints.
⑩ Cialdini, R. (2017). The Science of Gratitude.
⑪ Locke, E. A., & Latham, G. P. (2002). Goal Setting Theory.


次回、第5回は 「“してしまう側”と“される側”――両者の視点が重なるとき」。両方の立場を理解し合い、クレーム対応の最適解を探ります。どうぞお楽しみに!

投稿者について

hideyuki_kubota

1967年生まれのひつじ年の獅子座。O型