「管理職のレジリエンス」⑨

”限界と選択”

全てを救えない現実 それでも残る責任

香澄は分かっていた
どれだけ設計を変えても、どれだけ言葉を尽くしても
全員が同じ速度で回復するわけではない

チーム全体介入を始めてから、会議の空気は落ち着いた
違和感は表に出るようになり、誰か一人に負荷が集中することも減った

それでも・・・
悠斗の波は消えなかった

調子の良い週と
極端に口数が減る週
反応が柔らかい日と
刺々しい日

揺り戻しは『正常』だ
それは理解している


だが
チームの持続性という視点で見ると無視できない兆候でもあった

芽衣がそっと香澄に言った

「最近悠斗さんの機嫌をみんなが気にしすぎている気がします」

その言葉が香澄の胸に残った

レジリエンスとは
一人を守ることではない
チーム全体が持続できる状態を守ること

それを中間管理職は同時に背負わなければならない

香澄は初めて配置転換という選択肢を本気で考え始めた

それは逃げではない。罰でもない

環境と特性の不一致を是正する判断だ

だが・・・
本人にどう伝えるのか
チームにどう説明するのか
評価とどう結びつけるのか

決断には別の痛みが伴う

・本部長との面談
・数字とリスク
・離職可能性
・代替要員

その全てを香澄は一人で背負った

誰かを守るための決断が
別の誰かを傷つけるかもしれない

それでも選ばなければならない

翌週香澄は悠斗を呼んだ

「今の役割があなたにとって負荷が高すぎる可能性がある
それは能力の問題ではなくて、適合の問題だと思う

だから別の形で、あなたが力を発揮できる場所を一緒に考えたい」

悠斗は長く黙っていた
やがて、小さく言った

「正直、、、少しほっとしています」

香澄はその言葉を否定しなかった

全ての成長が同じ場所で起きる必要はない
全ての努力が同じ形で報われる必要もない

チームは少しざわついた
だが、崩れなかった

香澄は思った

限界を見極めることも
支援の一部なのだと

中間管理職のレジリエンスとは
耐え続けることではない
決断し、その結果を引き受ける力だ


次回予告

第10回 最終回
エピローグ
残ったもの 変わらなかったもの
そして・・・


参考視点 エビデンス

Edmondson 2024
「心理的安全性は
全員を同じ役割に留めることではなく
適合を見直すことで維持される」

Hakanen
ワークエンゲージメント研究
「役割不一致は
個人努力では回復しにくい」

McKinsey 2024
「高パフォーマンス組織は配置転換を懲罰ではなく最適化として扱う」

Hobfoll
COR理論
「資源の枯渇が続くと、本人だけでなく周囲の資源も消耗する」

いかがでしたでしょうか?

いよいよ次回最終回です

今回の展開は私としてもかなり悩みました

全てがハッピーエンドに見えなくても良い

実際のチームや組織はもっともがき苦しんでいる

このシリーズは、過去の展開と比べ よりリアルな感情を大事にしようと思い始めました

お読み頂いた皆様のご意見や感想など頂けるとありがたいです!

投稿者について

hideyuki_kubota

1967年生まれのひつじ年の獅子座。O型